連合奈良 海外視察報告!タイの労働事情視察とカンボジア難民支援を目的として・・・

(日 程) 2011年5月27日~5月31日
(場 所) タイ・カンボジア

(参加者) 団長 佃 寿巳(私鉄)、池本昌弘(自治労)、藤本恵多(自治労)、

      千木良隆寿(UIゼンセン)、前川広行(JP労組)、井阪征司(私鉄)、

      岸本洋一(情報労連)、橋本修(電機)、小柴茂樹(電機)、山上康広(電機)

      北島洋史(電機)、山中博(電機)、森吉正(電機)、阪田聖司(電機)

      竹平均(教育)、和田裕樹(JR連合)、山本伸行(電力)、土屋直行(電力)

      小南昌紀(教育連合)、杉本?範(連合奈良)、桐木正明(連合奈良)計21名

  2011年年5月27日から5月31日までの間、タイ・カンボジアの労働社会事情及び難民支援を視察しましたので、ここに報告します。

はじめに
 視察にあたり、最近のタイの政治情勢が非常に不安定であることを考慮し、一時は視察を控えることも考えましたが、電機関連(シャープタイ工場視察)など、多くの企業が豊富な資源と安い労働力を求めて国内から海外へ生産拠点を移転させる動きを加速させるなか、現地の労働社会情勢などを確認すべく視察するに至った。また、カンボジアでは貧困にあえぐ難民支援として、ポイペトの学校18校約630人分 1年間の水支援をカンパし、事情の視察を行った。
 
カンボジア支援

 施設を作らず孤児のこどもが育った村で支援をするやり方で、孤児となったこどもの家族や親戚を探し、親代わりとなって育てていくNGOモニティ。
 98年から村のこどもたちの教育に関心を持ち、識字率向上のため識字ポスターを作り配布しながら、民話の紙芝居と、絵本の朗読を続け、腹話術でこどもたちとの接触をする。  

 しかし、村には教育を受ける学校も無く、継続的な教育支援が出来ないでいます。

 98年12月 東京YMCAで開かれた「カンボジアのこどもたち」と題する写真展で集まった人々が中心になり、「カンボジアこどもの家支援の会ネットワーク」が動き始め99年に44名で支援の会が正式スタートしたと聞いた。
現在の活動
 1.孤児の里親支援

 現在15名の孤児を預かり、在村孤児院で孤児の世話をしている。

 2. 寺子屋活動

 約200名の生徒の寺子屋を始めていて、99年から新たに二個所の寺子屋を始め生徒数300名となっている。

 3.村の産業復興支援

 こどもたちの親の収入が低いため学校に来れないこどもが多いので、村の中に桑畑を作り養蚕を始め、ワークショップでは15才以上の孤児を中心に織物作りに精出していました。
 4.教育支援

 学校に行けないこどもの支援で、NGOモニティ代表の栗本氏が、自らの大学教授の立場から得た収入を全額 生徒を学校に通えるよう支援に使用している   

 

 特に私達は、子供たちに支援の一つとして水の提供をと要望があり、1年間飲み水に困らないよう支援を行った。

 <感想>
 

 周囲一面浸水状態で、都市機能はマヒしているように思えた。車のタイヤ半分ほどの浸水状態にもかかわらず、日常化しているのか市民は平然としているようにも見えた。  

 経済状態が思わしくなく基盤整備まで資金が回らないのであろうか?市民は半ばあきらめの境地なのであろうか?しかしながら、子供たちは、それらを苦にすることもなく、元気な笑顔で私達を迎えてくれたし、本当に自然の生活が体験できた。

 


2日目

(タイ市内に到着して)
 バンコク市の人口は約571万人(タイ全国で約6,338万人)と、名古屋市の約2.5倍である。
 予定通り5月29日(木)早朝に陸路バンコク市内へ。市内の中心部へは自動車専用道路も整備され、車中からは整然とした街にみえた。


(交通事情)
 市内中心部の道路事情は思ったよりも整備されていた。主要道路も広く(片側3~4車線)感じたが、朝のラッシュ時の交通渋滞には驚かされた、車が全く進まないのである。同様に驚かされたのがバイクの多さである。
 信号待ちで渋滞の車の間をすり抜け、信号待ちではバイクが最前列まで進み信号待ち、事故がないのが不思議である。バンコク市内は路線バスやスカイトレインと呼ばれる高架式鉄道、2004年開通の地下鉄など、交通機関の種類は豊富に用意されているように感じるが、このような状態はいつになったら解決するのだろうか。 
 
<感想>
 渋滞の状況を見ていて気がかりな点がひとつ。バイクの運転手はその殆どがマスクに皮(合皮)製ジャケットを前後反対に着て運転。聞けば、排気ガス対策の自己防衛とのこと。排気ガス等の人体に与える影響を考えれば、大気汚染の監視が必要である。

 早急な対応の必要性を感じたが、タイは健康福祉施策よりも経済発展が最優先なのであろうか。産業・経済の発展は「人」の経済活動によってなされていると思うのだが。

 

 

タイの労働社会情勢
 今やタイは日本進出企業が約1,300社(バンコク日本人商工会議所加盟企業数)と世界最大規模となっており、約65万人もの雇用を生み出しており、タイの経済発展に重要な位置を占めている。シャープタイ工場へ視察に行った際、雇用情勢について説明があった。

1. 雇用情勢
(1) 就業構造
 タイの総人口は6,574万人で、このうち労働人口(15歳以上)は3,694万人。
 ほかに、15歳未満人口が1,470万人、家事従事者、学生、就労不能など15歳以上の非労働人口が1,410万人いる。労働人口の内訳は、季節労働者18万人を除く一般就業者が3,625万人、完全失業率は1.37%となっている。
 タイの特徴としては賃金の支払いを受けない家族労働従事者が693万人もいるほか、雇いなし自営業者が1,092万人と、一般就業者のほぼ3割を占めていることが特徴的であるとのこと。
  また、タイにおいても発展途上国に見られる傾向と同様に、一般就労者の最終学歴は
① 学歴のない者      3.6%
② 初等教育終了までの者  56.5%
③ 中等教育終了までの者  25.8%
④ 大学卒以上       11.3%
 となっており、特に民間企業にとっては工学・技術系の人材不足が問題で、企業によっては人文系の人材を技術系業務に配置することも多いとのこと。日本企業も進出の際は人材確保に多くの労力を要するとの説明を受けたが、同時に就労の確保並びに技術の習得へ向けた日本企業の役割は大きくなっているとのこと。日本企業の進出によってタイの経済発展に寄与すると同時に、人材育成にも寄与しているとなれば喜ばしいことと感じた。

(2) 賃金
タイの民間企業における賃金は2006年では平均月6,439バーツ(約21,957円 )。バンコク周辺では平均月11,907バーツ(約40,603円)となっている。公務員の給与改定は、2004年4月に9年ぶりに一律3%上乗せされ、2005年10月に5%、2007年10月に4%の上乗せされている。
 

☆日系企業学歴・職種別初任給(バーツ)    ☆日系企業職種別在籍者賃金(35歳)
<学歴/職種>  <製造業>            <学歴/職種> 
●高卒ワーカー   6,200              ●技短
●職高                        製造業事務   15,300
  事務職   7,000                 製造業技術  16,000
  技術職   7,200              ●大卒
  ワーカー    6,600                製造業事務   23,500
●技短 製造業技術   29,000
  事務職   8,200
  技術職   8,600
●大卒
  事務職   11,000
  技術職   14,000

 
<視察を終えて>
 今回はシャープタイ工場の労働社会事情を視察し、今後の連合活動に活かすことを目的に行ったものでしたが、あたたかく迎えて頂き、ご協力に感謝申し上げます。
 また、バンコク市内の交通事情には驚かされたが、あまりにも都市機能がバンコク市に集中しすぎているのではなかろうか。平均賃金からして、バンコク周辺が月約2万円高いのであるから、人々は必然的にバンコク周辺に集中してくる。ここは交通緩和対策、環境対策の面からも、都市機能の分散化を図る必要があると感じた。
 また、教育の充実の必要性も感じた次第である。今でこそ多くの日本企業がタイに進出し、タイの工業化が進んでいるとのことであるが、現在でも農業が就業人口ベースで40~50%を占める主要産業であるとのこと、今後更に工業化を進めるには、やはり教育をハード、ソフトの面から充実させる必要がある。
 今回は実質4日間という短い視察であったが、改めて日本の良さが実感できる視察であった。

労働相談ホットライン フリーダイヤル:0120-154-052


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